今回の”What's New ”のコーナーでは、日医ジョガーズが毎年医療支援している東京マラソンの模様と、昨年改訂された心肺蘇生ガイドラインの内容を紹介します。


東京マラソン2011

 東京マラソンは過去4回開催されていますが、その内3回は雨の大会です。でも今回は気持ち良い青空の下、気温もまずまずの絶好のコンディションでした。
 このレポートでは、救護体制からみた東京マラソンについて紹介したいと思います。



東京マラソンの救護体制

1 ランニングドクター
 日医ジョガーズ会員40名が参加しました
 9時50分から11時まで5分毎に2〜3名が順に日比谷公会堂前(10.5q地点)を出発
 1qを6分で走る医師と、8分で走る医師が同じ時間にスタートします
 指定された時間とペースでコースを走り、監視に当たります

 ランナーの突発事故に対し、周囲の医療スタッフ、ランナーと協力して救命処置を行ないます


日比谷公会堂前に勢ぞろいした日医ジョガーズメンバー(左)、日比谷公会堂内の控室(右)

日比谷からゴールまでの約32qを走りますが、1q8分のペースでは4時間40分」かかります。
5q毎に時間調整するのですが、昨年は雨でしかも寒くてこれが一番つらかったそうです(私は当選したので選手で走りました)。
今年は天候がよく、ゆっくり観光を楽しんで走ったメンバーが多かったようです。



2 救護所、救護スタッフ・機材総数
 救護本部1ヶ所; 国際展示場内に設置
 救護所14ヶ所; 20qまでは5q毎、その後は約2.5q毎に設置。医師、看護師、トレーナーが待機。AEDと救護車両用意。
 救護スタッフと機材; 医師40名、看護師66名、トレーナー70名、AED66台、救護車両15台


日比谷公会堂前の救護所(左)、25q地点の救護所(中)、27q地点の駒形2丁目救護所(右)
下肢のトラブルで救護所を訪れる選手を多く見かけました。

3 モバイル隊とBLS隊
 モバイル隊は、AEDや緊急用具を持って自転車に乗り、受け持ち区域での救護に当たります(写真下、左、中)
 二人一組で隊を作り、22隊がスタートからゴールまでを分担します
 BLS隊は、救護所と救護所の間の1km毎に、AEDその他の救急用具を携えてコース上に待機(写真下、右端)
 隊員はBLS(一次救命処置)ができるよう講習を受けていて、二人一組の27隊で構成


幸いにして今大会では心肺停止などの大きな事故はなかったようです。
ただ晴れて気温が少し上がったせいもあったでしょうか、足のけいれんなどのトラブルが多かったと思います。
いつもはエアーサロンパスなどのエアゾルを携帯しますが、今大会から私たちが路上で使用することは禁止されました。
周囲にまき散らされる刺激臭などが、問題になったからだそうです。
個人が自分で使用することは問題ありません。



銀座4丁目付近は応援が最も多く、選手も一番盛り上がります(左)。
右手にゴール会場の国際展示場を見ながら、あと1qを楽しみます。気持ち良い青空がまだ広がります(右)



BLS(一次救命処置)ヘルスケアーマニュアルAHAガイドライン2010(心肺蘇生法)

 東京マラソンに先立って心肺蘇生法の講習会が、日医ジョガーズの会員を対象として東京で開催されました。
 このマニュアルを作っているのがアメリカ心臓学会で、昨年新しいガイドラインが出されました。
 日本でも昨年10月に日本蘇生協議会(JRC)と日本救急医療財団から、同じようなガイドライン(JRC2010)が公表されました。
 筆者もこれまでの蘇生法との違いを身につけるため、こののBLS講習会に参加してきました。


新しい心肺蘇生法の手順
1 反応と呼吸がない(正常でない)ことを確認
2 119番に通報し、AEDを取ってくる
3 脈の確認 、気管の横の頸動脈を触る

  (左側の図)
4 胸骨圧迫(心臓マッサージ)30回、テンポは1分間に100回以上、深さは成人では5p以上
  (右側の図)

5 気道を確保し、人工呼吸2回
6 胸骨圧迫再開

ガイドライン2005との相違点
A 気道→人工呼吸→胸骨圧迫の順が、胸骨圧迫→気道→人工呼吸の順に変更
B 胸骨圧迫のテンポが、1分間100回から100回以上となった
C 胸骨圧迫の深さが、成人4.5cm以上から5cm以上となった

これまでのやりかたと大きく異なったいるのは、胸骨圧迫を優先した心肺蘇生の手順です。
人工呼吸で胸骨圧迫が長く中断されると、蘇生率が大きく低下することが証明されたからです。
もし心肺停止の現場に居合わせて、自分に人工呼吸に自信がなければ、ひたすら胸骨圧迫を続けてください。


日医ジョガーズのHPはこちらです。