今回の”What's New ”のコーナーでは、今年から新たに日医ジョガーズの医療支援大会となった千歳JAL国際マラソンの模様をお伝えします。またランニング中の熱中症が心配な時期になり、その関連記事も掲載しました。


 第32回千歳JAL国際マラソン

 ”新緑の6月、原生林と千歳川で囲まれたコースで森林浴ランを楽しみませんか? ”
こんな言葉に惹かれたのと、今回から日医ジョガーズの医療支援大会になったことで、千歳JAL国際マラソンを走ってきました。

 今年の大会は6月3日開催でしたが、少し肌寒く感じました。スタート時の気温が10℃で、例年より低かったそうです。

 会場には本物の雪だるまが置かれ、可憐なスズランの花が参加者を歓迎します。

日医ジョガーズからは7名の医師が医療支援で参加しました。

 前夜の懇親会には大会事務局の方も参加して頂き、いろいろな話を伺うことができました。
 

 スタートは青葉公園で、本当に新緑が美しいところです。
 幸か不幸かこの日は曇空でした。陽が差していたら、木漏れ日がさぞかし見事だろうなと思いながら、スタートゲートを通過します。

 コースの34qまでは林道で、土の道を走ります。地面はよく整地されて固められており、殆どデコボコはありません。砂利で走りにくい部分も僅かです。
 スタートから22.6qの折返しまではゆっくりとした上りですが、傾斜は緩やかであまり坂を感じさせません。

 「もしこんなコースが家の近くにあったら・・・」なんて無理なことを考えながら走っていました


 
 コースの多くが林間コースではありますがが、晴れた日には強い日差しが照りつけるようなところもあります。
 年によっては気温が上がり、熱中症が多発することもあるそうです。

 土の林道とは34qでようやくお別れとなり、そこからは舗装道路となります。
 そこからは千歳川に沿い、ゴールに向かってやや下り気味に走ります。




 コース上に熊出没注意の看板があるのも北海道らしいですね。事務局の人の話では、最近も大会コースの林道で熊を見かけたという情報があったそうです。 

 この大会ではミニバイク隊がAEDや医薬品を携えて、コース途中に待機しています。また動けない選手を後ろに載せて運んでいるのを見ました。
 救護所では寒いせいか毛布に包まっている選手もいました。



 水量豊かで美しい千歳川に沿って、ゆっくり川を下る感じでゴールに向かいます。



インカのめざめ”をご存知ですか?
フィニッシュした選手に振る舞われるのが、それです。
黄金色に輝く小型の馬鈴薯で、食べると薩摩芋や栗のような甘い味と香りがします。
作るのが難しくて収量が悪いせいか近年は千歳でも作る農家がなく、事務局が1軒の農家に頼んで作ってもらっているそうです。
自衛隊の厨房車で茹でて、ボランティアの皆さんが皮をむいて用意してくださいます。

 
 フィニッシュ会場にはいろいろな食べ物ブースもあり、北海道ならではものも数多く見られました。
 そこでおいしい生ビールを飲み、串焼きを食べました。
 仕上げはタクシーで10分の新千歳空港の中にある、新千歳空港温泉です。空港内にあり大変便利です。黒っぽい色のお湯で、もちろん本物の温泉です。


 
 
 ずっと前にサロマ湖ウルトラマラソンを走ったことはありますが、フルマラソンでは初めての北海道遠征でした。
 爽やかでおいしい空気を吸いながら、新緑の美しい森の中を駆け抜けるという評判通りの素晴らしい大会です。
 原生林の真っただ中での森林浴ランを、是非一度経験していただきたいものです。
 日医ジョガーズとしては初めての医療支援参加でしたが、幸いに大きな事故は起こらずに大会は終わりました。

 仕事を終えて慌ただしく出かけ、走って、そして帰ってきた1泊2日の遠征でしたが、北海道のマラソンの良さを十分に堪能できました。


まさか自分が! それが熱中症です

 春の終わり頃から秋のマラソン大会で医療支援をしていて、一番危険で注意が必要なのが熱中症です。この疾患の怖さのひとつは、本人がまさか自分がなるとは夢想だにしていないことです。意識が朦朧として、フラフラと蛇行しながら走っているランナーは、決して珍しくありません。

昨年マラソン大会中に熱中症で救急搬送された選手は多数ありますが、その中に不幸な結果となったケースもあります。新聞上で公表されたケースをみると、熱中症の恐ろしさを改めて知らされます。

昨年6月と11月に起こった熱中症による死亡事故を検証します。

(1) 第10回記念果樹王国ひがしねさくらんぼマラソン 2011年6月12日 山形
 公務員の男性(41歳)が10qの部に参加し、8q地点で熱中症で倒れて病院に救急搬送されました。男性はよく運動をしていたそうですが、マラソン大会は初出場でした。この日は薄曇りで、気温は23℃前後でした。入院後に多臓器不全に陥り、14日に亡くなりました。
(2) 2011川崎国際多摩川マラソン 2011年11月20日 神奈川
 毎日5qを走っている会社員の男性(38歳)が、この大会の10qの部に参加しました。午前9時45分のスタート時の気温は20.8℃で、45分後の7q地点で倒れました。すぐに救急車で搬送され入院治療が行われましたが、翌21日他界されています。病院側から熱中症によるものと発表されました。倒れた頃の気温は24℃だったそうです。

 スポーツ時における熱中症の要因として、外的因子はよく知られています。即ち気温が高い、湿度が高い、風がない、日陰が少ない、ウエアや帽子が適当でないなどです。 しかし上記の大会時条件は、それほど悪くはないと思われます。

 学校保健の分野では、学校スポーツでの熱中症の分析検討が以前からよくなされています。そして熱中症になりやすい条件として以下のことが挙げられています。
○ 体力的に弱い人(新入生や初心者)
○ 肥満傾向の人
○ 体調不良の人
○ 暑熱順化のできていない人
○ 風邪などで発熱している人
○ 怪我や故障をしている人
○ 性格的に我慢強い、まじめ、気が弱い人

 我々ランナーにも大いに参考になると思います。