これまで東京マラソンは12回開催され、雨の大会も2、3度ありました。しかし今年のように最初から最後まで雨で、しかも低温という厳しい大会は、これまでありませんでした。日医ジョガーズは第1回大会から医療支援に参加し、今年もランドクターとしてコースを走りました。その東京マラソンの模様を、今回の"What's New"でご紹介します。


東京マラソン2019

 今年の東京マラソンの定員は38,000人と過去最高になりましたが、それでも抽選倍率は12.07倍という難関でした。
 せっかく当選して大会に臨んだ選手達ですが、気象条件が厳しく皆さん苦労されたようでした。

 この大会ではスタートから10kmまでをランドクター10名が、10㎞からフィニッシュまでを40名が走行し、医療支援を行いました。

 昨年は心肺停止が3名ありましたが、全員救命されています。今年は幸いに心肺停止はありませんでしたが、救護所を訪れたランナーは昨年の1.4倍に上りました。

 この日の気温はスタート時は5.7℃で、寒い雨の中を選手達は長時間号砲を待っていました。
 午前11時には気温が逆に4.9℃まで下がり、風も北寄りの風が約3m吹いていました。体感温度はかなり低かったと思われます。
 午後2時がこの日の最高気温で、6.8℃でした。

 私たちは低体温症や濡れた路面での転倒事故の選手が出ないかを、とくに注意して走行しました。

 私のスタートは10km地点の東京日本橋でした。ミッションは午前11時にスタートして、キロ7分でゴールまで走ることでした。
 日本橋辺りではまだ選手は元気です。
 しかし9.9㎞の関門閉鎖は11時ですので、陸連係員がロープを持って待っています。その手前には完走サポート隊(金色風船)が大声で励ましています。


 人気の応援スポットの浅草は15㎞辺りになり、東京スカイツリーも雨で煙っています。


 20㎞の富岡八幡宮付近になると、疲れの見える選手が増えてきます。
 そして憧れの銀座通りに入って来ました。(写真右) 大阪マラソンで御堂筋を走る感じですが、雨で昨年より応援が少なかったです。


 30㎞関門は有楽町駅のガード下です。この後は品川までを往復し、そして戻るとフィニッシュです。
 マラソンではよく30㎞に壁があると言われますが、この辺りから選手の動きが悪くなった気がします。
 日本のマラソンでマイル表示を始めて見ました。20マイル、32㎞地点です。


 やはり雨に煙る東京タワーと芝の増上寺が見えると、残り5㎞の表示がありました。気分的に少し楽になりますが、相変わらず雨は降っています。
 反対車線には最後のモバイルAED隊と、パトロールカーが見えました。。


 残り1㎞は丸ノ内のビルの谷間になり、声援が響き渡ります。それまで歩いていたランナーもみんな走り始めました。

 フィニッシュです。
 でもその表情は、もう走らなくていいと言う安堵感と疲労感がにじみ出ています。

 完走メダルを首に掛けてもらい、タオルを肩に記念写真を撮る頃になり、ようやく笑顔が出てきました。


 東京マラソンは世界一安全なマラソン大会を目指し、医療救護体制作りを行っています。
 今大会では500m毎にAED隊を置き、別にモバイルAED隊48名が自転車で巡回しました。
 大会全体で準備されたAEDは、合計120台という驚くべき台数でした。

 救護所はコース上には17ヶ所設置され、その全てに救急車と消防車輌が配備されています。
 これは救護所が消防現地警戒本部を兼ねているためで、テロ対策の一部です。